財団法人内外財務研究所



研究会レポート
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[本日のテーマ]
? 企業再生の現場

1.日時 平成19年10月26日 13時〜14時
2.場所 御堂アーバンライフ 当財団事務所
3.出席者 本日のリーダー
研究会員 3名
声元 通夫(当財団理事)
高嶋 信夫(当財団理事長)
高瀬 数久(当財団理事)
谷 憲二(当財団理事)

変化する企業再生の現場

1 企業再生を阻害する金融機関
? バブル崩壊後排出した不良債権はそれまでの金融機関にとって処理不可能な膨大な件数金額に達したため、当初はリスケジュールを主体とした金融機関支援による企業再生を基本方針としていた。
しかしながら当初予測(30兆円)をはるかに凌驚する不良債権総額(200兆円)の存在が明らかとなるにつれ、金融機関単独での個別対応ならびに対処を行うことは人材的、実務的にも不可能となり、遂には不倒神話を誇った金融機関の破錠さえ珍しくない状況に陥ったことは記憶に新しいところである。
この間、政府も金融システムの崩壊を防ぐため、或いは金融機関の統合合併の推進、公的資金の注入等の施策を矢継ぎ早に実施したが、併せて不良債権処理の受皿となる民間の債権回収専門会社(サービサー)の設立を認め、準公的機関である整理回収機構(RCC)と併せて基本的な処理スキームを完成させるに至った。
この結果、金融機関に債権譲渡による損失確定の途が開かれ、企業再生など面倒な個別対応の束縛から解放され、現在は一定期間の返済不履行を条件として期限の利益損失の措置を取り、担保物件処分などによる一連の回収処理を行ったのち、バルクセールなどによる債権譲渡により機械的に不良債権処理を行うように変化している。
いわば金融機関は当初の混乱期を経て不良債権処理スキームを確立させたのであり、このためきめ細かい金融機関の支援があれば再生可能な企業が続々と破錠しているのが現状である。

2 企業再生を阻害する「民事再生基準」
? 政府が指針を示した企業再生の可否判断基準、すなわち「民事再生基準」が中小企業再生の制約となっている。すなわち企業の抱える有利子負債総額を企業キャッシュフロー(経常利益+減価償却実施額)で除した年数により再生の可否判断を行おうとするものであるが、政府指針はこれを10年以内と定めている。
しかしながら中小企業の平均値(平均年数)が20年を超えている現状で上記基準をクリアすることは困難であり、銀行の本基準の対応はさらに厳しく(5年以内の返済可否を基準として運用)、本基準の制定が金融機関に新たなお墨付きを与え企業破錠を一層加速させているのも現状である。

3 新規法制度の現実
? 企業再生を目途としてバブル崩壊後に制定された「特定調停法」「民事再生法」は、その目標とするところは是であるが、現実の運用においてはその実効性に問題のあるケースが散見される。これら新規法制度利用により確実に企業再生が可能などと安易に考えるべきものでないことは事実である。

特定調停法
? 特定調停法は破産法等の倒産関連法ではなく民事調停法の範疇に属する。利益の相反する債権者と債務者が調停のテーブルに乗ること自体本法制定以前においては困難であったが、本法制定により一方当事者の申し立てにより義務付けられた部分は評価できる。
しかしながら「調停」すなわち「話し合い」は双方の合意によって成立するのであり一方当事者の不同意により容易に不調に終わる結果となる。債務者の申立てにより金融機関が特定調停のテーブルにつくことはあっても金融機関は債務者の要請に応じることはなく、さらに調停委員が必ずしも金融に精通していない現状、ならびに競売手続など法的回収の中断も行われないため現在では本法活用による企業再生を目論むケースは激減している。

民事再生法
? 本法による民事再生計画は債権者の法定多数の同意により認可確定されることになるが、中小企業による申立ての場合、大口債権者(一般に金融機関であることが多い)の同意を得ることは困難、また実現性の高い再生計画を示すことも困難なため認可確定には高いハードルが伴う。
その意味で事業規模、従業員数の多寡などいわゆる社会的影響の大きい企業が本法利用に適していると言える。中小企業の場合、幸運にも民事再生計画が認可確定しても、以後の金融機関の消極的対応や取引先の減少などにより最終的再生を果たすのは認可確定企業の1割程度にとどまるのが現実の姿である。

住現実的な企業再生手法

具体的手法の比較
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事業譲渡・分社設立
? 優良事業部門の切離しと譲渡、また分社設立による実質的企業再生を図ろうとする手法は一時定番化していた。
これらの手法は資本関係、人的関係の錯綜、取引先の重複等により本体企業と完全に分離独立して事業再生を図ることは困難で、中には法的疑念を抱かせ追及を受けるケースも散見される。
本手法は経営者にとって着手容易な手法であるが、現場を見る限り期待ほどの効果をあげていない。

別法人設立
? 事業譲渡・分社設立手法に代え、資本その他のしがらみを断った新会社設立および同社への事業実質譲渡による企業再生が現在のところ有効のようである。経営者の懸念する「法人格否認の追及」「元会社に対する債務名義の新会社への追及」については判例ならびに関係条文により基本的に保護されており、現在のところもっとも活用しやすい企業再生手法と考えられる。


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